経営管理ビザには、「法務省令で定める3つの基準」があります。
法務省令で定める3つの基準
まず、基本となる条件を確認しましょう。経営管理ビザの条件は、法務省令において次のように定められています。
申請人が次のいずれにも該当していること。
一 申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。
二 申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。
イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。
ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。
三 申請人が事業の管理に従事しようとする場合は、事業の経営又は管理について三年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」
(平成二年法務省令第十六号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H02/H02F03201000016.htmlより引用
これを簡単にまとめると、経営管理ビザの基準となる条件は次の3つです。
日本国内に事務所があること
資本金が500万円以上であること
事業の経営・管理経験が3年以上あること(管理業務に従事する場合)
それぞれ、具体的に説明していきます。
経営管理ビザの基準1 日本国内に事業所(または事務所)があること
1つ目の基準は、経営する事業所(または事務所)が日本国内に既にあるか、確保されていることです。会社の本拠地となる事務所は、必ず日本国内に確保しなければいけません。
しかし、ただ事業所があれば良いということではなく、行う事業によって適切な事業所を確保する必要があります。事業所については、総務省が定める日本標準産業分類一般原則第2項において
経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われていること
財又はサービスの生産と供給が、人及び設備を有して継続的に行われていること
と定義されており、この2点を満たしている場合には事業所として適合しているものとされます。
経営管理ビザの基準2 500万円相当以上の事業規模
2つ目の基準は事業規模です。次のいずれかに該当していることが必要です。
その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する2人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること。
上記に準ずる規模であると認められるものであること。
日本に居住する2人以上の常勤の職員を雇用するとは?
2名以上の常勤職員は、一般的な就労ビザの方は含まれず、日本人や永住者等であることが求められます。
日本人
永住者
特別永住者
定住者
日本人の配偶者等
永住者の配偶者等
しかし、一般的には、会社を設立し、資本金の条件を使用することが多いため、常勤職員を雇用してビザを取得する申請は行いません。
「日本人や永住者を職員にすると審査にプラスになる」と考えていただければ良いと思います。
資本金または、出資の総額が500万円以上とは?
もう1つが資金の基準です。こちらについては一般的に、会社設立時の資本金が500万円以上であることが求められます。
この500万円以上の資本金については、借入でも可能ですが、近年その資本金が本当に資本金として投資されたものであるのか又は、一時的に入金されただけのものであるのかが厳しく審査されております。
また、その資金の形成過程の詳細な説明も求められております。もちろん、一時的な入金で500万円以上準備したとしても、それは経営管理ビザの基準としての資本金が500万円以上だとは認められません。
経営管理ビザの基準3 申請人の経験と報酬
3つ目の基準は申請人の経験と報酬です。申請人が管理者として経営管理ビザを取得する場合、必要となるのがこの経験年数と報酬額の基準です。
実務経験が3年以上とは?
実務経験には大学院で、経営または管理に関わる科目を専攻した期間も含まれます。
日本人と同等以上の給与水準とは?
日本人と同等以上の報酬というのは業界や業務内容により変わってきますので明確な金額は申し上げられませんが、約20万円以上と言われています。
実質的に問われる4つの要件
日本の場合は、法律の基準と、出入国在留管理局(旧入国管理局)の担当者の基準とが異なるのが実情です。
そこで、私どもの申請経験をもとに、2020年現在、実務で実質的に使われる4つの基準をご説明します。この中でも、2と3の基準を満たすことが特に難しく、申請人/代理人の力量が問われます。
経営主体となる会社が日本国内にあること
会社の実態があると判断できること
会社の事業の継続性と安定性があると判断できること
経営管理者本人の経営能力があると判断できること
実質要件1:経営主体となる会社があること
まず、大前提として、「申請前に会社がすでにあること」が条件になります。
よほどの例外を除き、会社を設立を→経営管理ビザを申請という流れで申請を行います。
ただし、会社にも要件がありますので、よく考えずに会社を作ってしまうと、ビザの申請段階で再度作り直しや、登記のやり直しが必要になることがありますので、注意が必要です。
つまり、「経営管理ビザの取得を想定して会社設立を行う必要がある」ということです。
具体的な要件は、個々の状況に応じて変わってきますので、設立前の段階で十分に確認することをおすすめします。
実質要件2:会社の実態があり、いつでも事業を開始できる状態であること
2つ目の要件は、「実態として会社が存在し、事業が開始できるだけの準備が完了していること」になります。
具体的には、次のとおりです。
資本金500万円以上あること
業務用の事務所と必要な設備・機材が整っていること
日本国内で常勤雇用者2名以上採用しているか、採用予定であること
これは、どういうことかというと、申請をする前に「会社の法人格」「資金」「事務所」「設備」「人材」など、「会社経営に必要な要素を一通り揃えてから申請しなければ経営管理ビザの申請は通らない」ということです。
なぜ先にリスクを取って投資をしてからでないと申請ができないのか
「なぜ経営管理ビザが取得できるかもわからないのに、ここまでリスクを負って準備をしなければならないのか?」
おそらく、このような疑問を持ったのではないでしょうか。まずは出入国在留管理局の考え方を理解する必要があります。
経営管理ビザの審査において最も懸念されている点は、「あなたの会社が、不正にビザを取得するために作られた偽装会社ではないか?」ということです。
この疑惑が解消されないかぎり、ビザが許可されることはありません。
したがって、こうした疑惑に対して反証するために、実際に事業を開始するために必要な、「資金」「事務所」「設備」「人材」を整えており、あなたが本気で事業を行うことを示す必要があるわけです。
少々理不尽に感じるかもしれませんが、出入国在留管理局がこのような考え方でいる以上、このルールに則って申請を行うしか方法はありません。
実質要件1で確認した会社の設立を合わせると、経営管理ビザ取得のためには、ビザの申請までに多額の投資が必要になり、申請がおりなければその投資が無駄になってしまうこともあります。
そのため、具体的な申請の準備を進める前に、「経営管理ビザの取得が本当に可能なのか?」を含め、十分に検討・確認することをおすすめします。
実質要件3:事業の継続性があると判断できること
3つ目の要件は、事業の継続性とその実現可能性です。経営管理ビザの申請においては、この事業継続性の証明が最も重要で難易度が高い部分です。
事業計画書における説得
新規会社での申請の場合には、事業の継続性は事業計画書において判断されます。
この事業計画書において
あなたは何者で、なぜこの事業を行いたいのか
あなたは本当に、この事業を実現できるのか
どのような組織体制にし、どのように営業活動を行うのか
将来の収支の見通しは立っているのか
など、審査官が持つ様々な疑問に、説得力を持って答える必要がありますので、新設法人の場合は、「経営管理ビザの取得には、事業計画書が最重要資料」と考えてください。
一方で、すでに営業中の会社の経営者になる場合であれば、事業の継続性は、原則、決算書で判断されます。売上が立っているのか、利益が出ているのかなど、極めて客観的な判断になります。原則として、黒字経営であれば継続性があると判断され、赤字であれば継続性に問題があると判断されると考えてよいでしょう。
赤字等の理由で、事業の継続性に問題があると判断される場合には、新規会社同様、事業計画書や再建計画書など将来プランの提出が求められることが出てきますし、複数年の赤字や債務超過、資金繰りが行き詰まるなどの状況になれば、継続性がないことは明らかですので、新規取得にせよ更新にせよ、申請が許可されることは難しくなります。
実質要件4:経営管理者の管理能力があると認められること
実務経験が3年以上あること
求められる業務に必要なスキルや経験があると認められること
日本人同等以上の報酬であること
最後の要件は、経営管理者の経営能力です。この実質要件4は、通常は問題にはなりません。
基本的には、実質要件3の「事業の継続性」と合わせて、「事業計画書」において経営者としての能力を判断されると考えてよいでしょう。
ただし、外国人が経営することは現実的ではないと考えられる業種や、申請人の年齢やキャリアが明らかに水準に満たないと考えられる場合においては、経営者として十分な経営管理能力があることを証明する必要があります。
実質的に問われる4つの要件まとめ
長くなりましたので、簡単にまとめます。
実務で問われる実質的な要件は次のとおりです。
経営主体となる会社が日本国内にあること
会社の実態があると判断できること
会社の事業の継続性と安定性があると判断できること
経営管理者本人の経営能力があると判断できること
基本的にはこの4つの要件を満たしていれば、経営管理ビザの取得はできると考えて良いと思います。